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山道を行く

カラダとアタマと心。 すべて働かせるのが山の魅力でしょうかね。

【事故報告書8】 富山ハイキングクラブ



遭難カルテ133で触れた、読図訓練山行中の道迷い。
富山ハイキングクラブのHP大品山の件というページが立ち上げられていました。
事故後早々にとりあえずの対応をした、と言うところでしょうか。
今回はその内容についてです。

会長とリーダーの連名による文章です。
ちなみにこの会長も、今回の事故に遭った山行の参加者の1人だと報じられていました。

おおまかな概要が述べられています。

まず、暖冬少雪のため、あえて雪の多い山を選んだとのこと。
初心者中心で地形図とコンパスが頼りであれば、積雪の有無はあまり関係がないと思います。
むしろトレースどころか踏み後すらない場所でやる方が、読図訓練には適しているのではないでしょうか。
当然、視界があるほうがいいわけで、ホワイトアウトの危険がより高い雪山でやる必然性が理解できません。

下山中にトレースの怪しさを感じ、「自らのルートファインディングで下方へ向いました。このときに下山方向がずれ調整池方面の隣尾根を下ってしまいました。」とあります。
自分たちの判断に基づいての行動を始めてから、ルートをロストした、ということでしょうか。

間違えて枝尾根に入ってしまう・・・そこまではありうることでしょう。
ただ、目的とする尾根と向かう方向にずれがあることは、コンパスと地図である程度把握できるはずです。
また、尾根の斜度や枝分かれの状態なども、目的の尾根と違う場合が多いと思います。
休憩の際に、次の1ピッチ分の方角と斜度・地形を、動き始めるまでにある程度頭に入れておき、あれ?と思ったら地図を読み返すなり登り返すなり…。
その作業の積み重ねしか、回避する方法はないように思います。

それほど疑問に思うこともないまま、下りに下ってしまい…という状況だったのかもしれません。
マスコミに対してリーダーが、異議を唱えたメンバーがいた、ということを話していました。
少なくとも気づくチャンスがあった、と言えます。
7人の「目」があって、1人から「あれっ?」。
その1人の疑問を解決することなく進んだのも、原因のひとつでしょうか。
リーダーシップの問題か、パーティーシップの問題か、それとも両方の問題か。
詳しい報告を待ちたいと思います。



そして、コンパスと地図を、どのように使っていたのか。
さらに、携帯していたGPSは…。

コンパスや地図があれば大丈夫とは言いませんし、GPSが万能とも言いません。
ですが、あるとないとでは大違いです。
また、使いこなせていないのであれば、持っていても効果は薄いものです。
道具だけでなく、経験からくる知恵のようなものも必要でしょう。
訓練というのはその知恵を身に付けることが目的だったのではないでしょうか。
今回はこれらの道具を十分に使いこなせていなかったことも、原因のひとつではないか…と、考えてしまいます。



このページ、「今後とも、私どもへのご批判、ご指導をお願いいたします。」という言葉で結ばれています。
このページの設置より先に掲示板は一時閉鎖されていました。
が、現在は公開されています。
「ご批判、ご指導」を受けるため、と解すればいいのでしょうか。
文面は昨年4~6月のものしか見ることができません。
そのなかで「GPSの功罪」へのやり取りが、なかなか興味深い内容でした。


今回公開された文章は、とりあえずの概要報告といったところ。
詳細が公開されれば、それを見たうえで、さらに考えてみたいと思います。



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  1. 2007/03/30(金) 21:05:08|
  2. 事故報告書
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【遭難カルテ133】 50~60歳代の7人、無事救助

【概要】
21日午後7時45分ごろ、富山市本宮の大品山(1404メートル)付近に登山に出掛けた7人パーティーの男性から携帯電話で「山頂から下山中に沢に入り込み、道が分からなくなった」と110番があった。7人は「富山ハイキングクラブ」に属する53~68歳の男性5人、女性2人。富山県警は7人に対し、その場を動かないように指示。22日午前6時50分ごろ、県消防防災ヘリが標高約680メートルの沢すじの急斜面でテントの生地を振る7人の姿を確認。3回に分けて7人を引き上げ、ふもとまで搬送。午前8時15分までに、全員を救助した。けがなどはない様子。7人は、21日朝、日帰り予定で大品山に「読図訓練」のため登山にでかけ、立山山麓スキー場のらいちょうバレーゴンドラ駅から入山。午後7時45分ごろ、下山中に沢に入り込み道が分からなくなったという。救助要請後、7人は固まってツエルトをかぶり、寒さをしのいだという。一行はGPSを携帯していたが、途中で その指示に従わず誤った道に迷い込んでしまったらしい。発見されるまでの間、7人は木の幹とそれぞれの体をロープで結び、転落しないようにしていた。夜は頭からテントのシートをかぶって寒さをしのぎ、歌を歌って助けを待ったという。大品山は、この時期には積雪があるが、ふもとのスキー場付近からのリフトを使えば、山頂まで1時間ほどで行くことができ、ハイキングコースも整備されている。以下はリーダーを務めた男性(53)の弁。「大変ご迷惑おかけし、それと同時にありがたいと、これで生きて下に戻れる」「他の登山者の足跡を深追いし過ぎ、本来通るつもりだった尾根よりひとつ手前の尾根を下ってしまった」「一度下りた事があるので軽い気持ちで皆を導いてしまった。異を唱えたメンバーがいたが、自分で思い込んでしまった」「大品山は過去にも来たことがあった場所なので、自分の判断で下山する道を決めてしまい戻れなくなった」。
(共同通信、NHK、富山新聞、日本テレビ、北日本放送よりデータ引用・抜粋)



【考察】
富山ハイキングクラブのHPより3月の行事予定を見ると、3月21日には読図訓練山行とあります。
読図訓練に出かけて道迷い遭難……なんとも皮肉な結果になりました。


読図訓練ということなので、参加者全員が地図・コンパスは携帯していたはずです。
さらにGPSまで装備していた。
にもかかわらず、道に迷う…。
「その指示に従わず」「異を唱えたメンバーがいた」…。
ちょっと言うべき言葉が見つかりません。
せっかくの道具があり、疑問の声を上げたメンバーがいたにもかかわらず、リーダーの「思い込み」のほうが優先された結果と言うべきでしょうか。

読図訓練でありながら、「他の登山者の足跡を深追いし過ぎ」。
トレースの「引力」のようなもの、改めて考えました。
自分も結構無自覚にトレースに乗っていたことが、多々あったと思います。
いったんトレースに乗っかってしまうと、読図がおろそかになる面があると思います。
「無条件」に信じてしまう、とでも言えばいいでしょうか。
先行者がルートをロストしていたら・・・。
そういうことを考えると、後々、ぞっとします。
トレースがあったとしても、時に立ち止まって確認する作業は、やはり必要なようです。



今回の件、残念に思うことが一点。

ツエルト(?)やロープなど、ある程度のビバーク装備は持っていたようです。
一夜は無事に過ごし、全員がけがなく救助されたことから、ビバーク対応もできていたと思います。
言い換えれば、一晩程度のビバークには十分耐えうるパーティーだったと思います。

そういうパーティーであればこそ、ビバーク明けに自力下山の道を探る、という方向に進まなかったことが残念なのです。
もう少し自力でどうにかできなかったんだろうか。。。との思いが残ります。

もし、1日下山は遅れてでも自力で下りてしまったなら、「遭難」とはならないと思うのです。



「大事に至る前に」という救助要請、分からなくもありません。
けが人や亡くなる人を出す前に、と言う意味では理解できます。
県警の「動くな」という指示も、救助・捜索する側からすれば当然かと思います。
が、一方で「安易な救助要請」も問題になっています。
今回が「安易」に相当するものなのかどうかは分かりませんが、他に道はなかったんでしょうか。。。
あったようにも思えるので、残念な気がするのです。


どうしようもない場合には、救助を求めるほかはありません。
どこまでが「安易」で、どこからが「妥当」かの線引きは難しいと思います。
ですが、最後まで、「自力下山」への努力は、怠らずにいたいと思いました。

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  1. 2007/03/24(土) 16:49:04|
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【遭難カルテ132】 栗駒山で不明の夫婦救助

【概要】
21日午後5時35分ころ、岩手・宮城県境の栗駒山(1627メートル)に登った岩手県一関市の市非常勤職員(63)と妻(64)が下山しないと、家族から岩手県警に通報があった。夫婦は21日午前8時ごろ、日帰りの予定で宮城県側から入山。午後1時半ころ、夫から携帯電話で「頂上に着いたが吹雪で道が分からないので、しばらく頂上付近にとどまる。夜になっても下山しなければ警察に届け出てほしい」と長女に連絡があった。その後、連絡が取れなくなり、夕方になっても下山の連絡がなかったため、長女が110番通報した。22日早朝から捜索が行われ、午前6時35分ごろ、山頂から北北東に約800メートル付近の沢で、手を振って救助を求める2人を宮城県警のヘリコプターが発見し、無事救助した。妻にやや疲労と凍傷がみられるものの、いずれも元気という。2人は吹雪で道が分からなくなったため、沢に下りてしのいでいたらしい。夫妻は約10年の登山歴があり、雪山の経験もあった。
(朝日新聞、読売新聞、共同通信、時事通信、河北新報よりデータ引用・抜粋)



【考察】
「頂上に着いたが吹雪で道が分からない」
自分のつけたトレースをたどれば下山できそうではありますが、激しく吹雪いていると、トレースは一瞬で消えてしまいます。
あとは地図やコンパスを頼りに下山するほかはありません。
天気図から見ると21日は、大荒れというほどに荒れるような感じはしなかったのですが。。。

22日には東北の日本海沖に前線を伴う低気圧が発生、夕方には現場付近に至っています。
早朝の捜索で発見されたのが、無事だったひとつのポイントかもしれません。

さて、実際に現場では天候が荒れていたわけで、事故を防ぐにはさっさと撤退するのがベストだったのかもしれません。
この判断、明確な基準がないので、かなり個人差があると思います。

遭難カルテ131で扱った事例と同じで、家族にSOSの連絡をとっています。
前回はかなりの時間を食ったケースでしたが、今回は家族に直接連絡がつき、早めの通報となりました。
下界の緊急連絡先のありかた、興味深い差ではないでしょうか。

山中では携帯電話がどこでも通じるわけではありません。
通じなくなるかもしれない、だから通じるうちに。。。
ということで早めに手を打っておく、と言う方法もアリかと思います。
今回は、ビバークの状態からでは電波が飛ばなかったのではないでしょうか。
事前に家族への連絡がついていたことで、捜索の立ち上がりも早かったのでしょう。
そこが前回との違いのひとつだと思います。


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  1. 2007/03/24(土) 16:27:53|
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【日々是好日127】 和解勧告

久しぶりに、大日岳訴訟の話です。
「日々是好日」でも何度か触れてきました。
223031368586など)

報じられた内容、かいつまんで言うと、以下のとおり。

名古屋高裁金沢支部で、12日に控訴審が結審。
第1回口頭弁論で、遺族側は控訴棄却を主張。
これに対し、国側は1審判決取り消しを求める控訴理由書を陳述し、学者ら2人の証人を申請。
裁判所はこれを棄却し結審、加えて和解を勧告。
双方が受け入れを決め、5月7日に和解協議。
遺族側は好意的に受け止めているが、国側はコメントせず。
裁判所は「将来に生かせる形での解決を」とのこと。



国が新たに証人を立てて控訴しましたが、裁判所はこれを蹴った、ということでしょうか。
そもそも1審判決をひっくり返すほどの新たな証拠や証言が出てくるとは思えなかったのですが。。。

この和解勧告、事実上の国敗訴と言えるのではないでしょうか。
将来に生かす、これが最大の善後策であることは疑いないことです。
そこにどういうミスがあり、それを防ぐにはどうすればいいか。
遺族側の訴えの中に、それはすべてあります。
そして、それをはっきり認識するところから始まるものなのでしょう。

和解の内容はどうなるのか。。。もう少し目が離せません。



今回の事実上の国敗訴の裁判、判例として残ることになります。
同様の件が発生、訴訟になったときの判断の下敷きとして使われることになります。

ガイドや講習会といった、営利的引率型登山の主催者には、重い内容だと思います。
また、非営利のリーダーにも、少なからぬ影響があるのではないかと思います。
ただ、営利と非営利、プロとそうでない人、ガイドとリーダー。。。
これらの責任の差の壁は、しっかりと崩さずにいて欲しいと、改めて思いました。


いずれにしても、尊い犠牲が今後に生かされるような内容の和解を望んでやみません。


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  1. 2007/03/14(水) 22:05:14|
  2. 日々是好日
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【日々是好日126】 サービス業、失格?

昨年10月の白馬の遭難の件。
報告書出るのかな?と思って、ネット内をうろついていました。

事故に遭った田上和弘ガイドの勤務先のHPによると、白馬岳遭難事故について(昨年11月13日付)のページにて、「報告書は年内には作成されるものと思いますが、恐らくアルパインガイド協会から公開されると思います。」とあります。
また「彼は日本アルパインガイド協会の会員ですので、その上部団体の日本山岳ガイド協会の倫理委員会に取り上げられ、審議されるようになります。」とも。
この文章を書かれたのは、浦一美氏。
以前にも書いたのですが、浦氏は全九州アルパインガイドクラブ代表であり、日本山岳ガイド協会の役員でもあります。

浦氏の言葉から、まず日本山岳ガイド協会のHPをのぞいて見たのですが、何も情報はありませんでした。

続いて日本アルパインガイド協会のHPへ。
報告書の掲載は…やっぱりありません。。。残念。。。

関連するものとして1月度理事会決議、承認事項というのがありました。
1月9日に開かれた理事会の内容を、ざっとまとめたものです。
田上ガイドはこの中で厳重注意処分と決まったようです。




長い前振りとなりましたが、本題はこれから。

この「理事会決議、承認事項」の中で、松島利夫ガイドが資格停止6ヶ月、松本邦夫ガイドが厳重注意の処分とあります。
両ガイドとも、協会理事。
今回の件を受けて(?)、お二方とも理事を辞任しています。

処分の理由は、協会主催のスクールで松島ガイドが飲酒の上、参加者に暴言・侮蔑発言をしたこと。
松本ガイドはそれに対して適切な対応ができなかったこと。

う~~~ん。

客に対してそのような発言をする。。。
しかも飲酒の上。。。
サービス業としては、考えられない。。。
しかも、その後のフォローが。。。

全く、やれやれな話です。


また、同じ日の理事会でクレーム処理内規が制定されています。

この二つを並べてみると。。。
トラブルが起きた。
さて、どう対応する?
あれ? ルールブックがない?
困ったなぁ…。
仕方ない…すぐ作ろう。。。
こういう図式が浮かんできます。

客に暴言を吐く人。
フォローができない人。
コトが起きるまで、クレーム対応が考えられていなかった組織。
しかも、当の本人たちは、協会役員。

なんともサービス業者やその団体としては、未熟としかいえません。。。
登山の技術がいかに優れていたとしても、サービス業者としては「失格」ということになると思います。



以前、某所でずいぶんとエラそうなガイド氏に会ったことがあります。
客がすっかり萎縮していて、楽しんでいる雰囲気はありませんでした。
うわー、すごいなぁ…よくこんなのについていけるなぁ…と思ったものです。
今回は、これと似たようなケースかもしれませんね。

もちろん、みんながみんなそうではありません。
すばらしいと思ったガイド氏にも会ったことはあります。

ただ、マイナスのイメージというのは、些細なことでも大きくなってしまう面があります。
コツコツ積み上げたプラスのイメージが、ちょっとしたマイナス用件で全部ひっくり返ること、ざらにあるものですから。。。

ましてや最近、遭難報道で「ガイド」と言う単語が、結構目に付くようになりました。
世間からの注目も、高まりつつあるのでは?と思います。



ただ、評価できる点がないわけではありません。

不祥事は隠し、うやむや、闇から闇。。。
そんなふうにせず、ある程度の情報を公開した点です。

事件に向き合うこと、組織への信頼回復、組織・業界内のモラル向上。。。
そのあたりを意識している部分の現われではないかと思います。

起きてしまった事件自体は、とても残念で、がっかりするようなものでした。
が、少なくとも、理事会以降の対応は、多少の好感を持ちました。

今回の件、ガイド組織や業界がより洗練(淘汰?)されたものになっていくために生かされることを願ってやみません。
(ついでに、白馬の報告書も出してもらえるといいんだけど。。。)


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  1. 2007/03/10(土) 20:22:27|
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【遭難カルテ131】 氷ノ山で女性、遺体で発見

【概要】
5日午前2時40分ごろ、京都市内の女性から「母親が氷ノ山(1510メートル)で遭難している」とを通じて、兵庫県警養父署に通報があった。遭難したのは同県豊岡市の会社員女性(54)。京都に住む二女(23)の携帯電話の留守番電話に、4日午後6時から同7時の間に「遭難している」「助けて、近くに滝がある」「寒くて死にそう」などと計5回、携帯電話で連絡があった。5日午前0時半ごろ、二女から京都府警に捜索願が出された。携帯電話の位置探索から養父市福定の山中にいることが判明したが、その後、電波が不通となった。その後の捜索で、女性の車が氷ノ山中腹にある福定親水公園に止まっているのが見つかった。入山ポストに入っていた入山届によると、4日午後2時40分に入山し、同6時に下山予定で、1人で入山しているとみられる。標高1300メートル付近にある避難小屋にある備え付けメモに、女性の署名とともに「4日午後5時9分」「雪が少ない。長靴のみで楽勝でした」などと書かれていた。5日の捜索は日没で打ち切り。6日午前10時20分、登山道から約400メートル離れた滝つぼで死亡しているのを、5日から捜索していた登山仲間が見つけた。場所は標高約850メートル付近にある不動滝。身元の確認を急いでいる。小屋からの下山途中で遭難したとみられる。氷ノ山山中にはほとんど雪は残っていないが、現場付近は4日から5日にかけ激しい風雨。6日の現場付近は朝から雪だった。女性は地元の登山グループ「但馬山友会」のベテランメンバー。氷ノ山もたびたび1人で登っていたという。
(朝日新聞、毎日新聞、産経新聞、神戸新聞よりデータ引用・抜粋)



【考察】
各社報道分から、多少時間の錯綜があるのですが、概要はざっと以上のようだと思います。

福定親水公園から入山したのであれば、この避難小屋は氷ノ山越避難小屋となります。
標高は1300メートル付近と報じられていましたが、より正確に言えば1250メートル付近。
避難小屋からの稜線は兵庫・鳥取県境で、小屋に至るルートは鳥取側からもあります。
個人的感想ですが、このルートは特に難所があったとは記憶していません。
比較的しっかりとした道で、あまり迷うようなところもなかったように思いました。


さて、今回提起したいのは遭難したときの通報先です。

時系列のおさらい。
4日 午後2時40分入山。
   午後5時9分、避難小屋。
  (この後遭難事故発生)
   午後6時~7時、娘の携帯留守録に5回連絡。
5日 午前0時半、京都府警に捜索願。
   午前2時40分、京都府警から兵庫県警養父署に通報。
   日没まで捜索活動。
6日 午前10時20分、遺体発見。


娘への最初の通報を午後6時とすると、所轄の養父署に連絡が届くまで8時間半かかったことになります。
家族への連絡は否定しませんが、直接、養父署なり兵庫県警なりに連絡をしていれば・・・。
もちろん、そうすることで助かったかどうかは分かりません。
ですが、現場から状況を伝え指示を仰ぐことはできたのではないか。。。
そうすることで別の展開があったのではないか、と考えるわけです。
少なくとも、午後6時~7時の間は電波が届く範囲にいたわけですから、電話番号さえ分かっていれば、通報は可能なはずです。

周知のとおり、警察は縦割り組織であり、縄張りがあります。
京都府警が「氷ノ山で遭難」とだけ聞いたとしたら、兵庫県警と鳥取県警のどちらに連絡するか、ということを考えるのでしょう。
兵庫・鳥取県境の山なので、当然と言えば当然のことです。
いちおう両方に声はかけておく、という方法もありますが、そうしたかどうかは不明です。
おそらく、携帯電話の発信場所特定をして、それから兵庫県警に連絡した、ということだと思われます。

警察組織の弊害(?)とするならば、改善されるに越したことはありません。
しかし、現実にそうなるには多くの問題があり、解決には時間がかかります。
そういった現状から言えば、養父署に通報するのが実際にはベストだったと思います。
入山するところの所轄警察署の電話番号は、事前に押さえておく必要がある、と言ったところでしょうか。

また、家族に登山計画が伝わっていれば、遅くても5日午前0時半には養父署に連絡が入ったことになります。
家族であれ所属山岳会であれ、万一のときに連絡をするところには、詳しい計画を伝えておくべきだったのでしょう。



遭難から捜索開始に至るまでの時間。
数分で明暗を分ける場合もありえます。
今回は夕方の発生で、最初の娘への通報と日没はほぼ同じ時間。
ですので、養父署へ直接通報したとしても、夜間の捜索が行われるかどうかは微妙です。
入山時間が午後2時40分というのは、遭難・捜索のことを考えると、少々遅いように思います。



この「但馬山友会」について。
兵庫県山岳連盟にも兵庫県勤労者山岳連盟にも、属していないようです。
独立系組織と言った方がいいのでしょうか。
捜索には会の関係者も出たと思われます。
統計上、今回のケースは組織・未組織のいずれに分類されるのでしょうか?
些細なことですが、ちょっと気になりました。。。


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  1. 2007/03/09(金) 20:53:10|
  2. 遭難カルテ
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【日々是好日125】 気に入った山

気に入った山。

日々是好日122で「気になる山」と言う話を書きました。
今回は似ているところもあるけど、ちょっと違う…。

気に入った山というのは、私にとっては何度も足を運んでしまう、ということです。
繰り返し繰り返し行ってしまう、それは気に入ったからにほかなりません。
それこそ、何とかのひとつ覚えみたいに・・・。

まさに個人的な好みの問題ですので、10人いたら10の山があがっても不思議ではありません。

ウチの仲間内でも、意見が分かれます。
「確かにいい山なんだけど、何回も行くとなるとなぁ…」みたいな感じです。
付き合うこともあれば、付き合ってもらうことも…。
誰も付き合ってもらえなければ、ひとりででも行くかぁ。。。


ここのところ書いてきた麦草岳、私の気に入った山です。
人のいない静けさ、小さくて気持ちのいい避難小屋。。。
今回は図らずも、他のパーティーも入山していました。
そこに魅力を感じてくれた人がいたことは、素直にうれしい。
少なくとも「行ってみよう」と思い、行動に移してくれたわけですから。
(結果、『もう2度と行くかぁ!』と思ったかもしれませんが…)
ただ、あまり人が増えると、げんなりすることになりますが。。。

気がつけば、繰り返し同じ山に行くことが多くなりました。
20代の頃は「次はあっち、その次はこっち」と、次々に行きたいところが出てきました。

ここ何年かは、仕事や家庭のことで(ほぼ、『兼業主夫』状態ですが。。。)、山にいける回数も限られています。
そんな中、変に落ち着き(?)を見せ始めているようで・・・。

これもトシをとり始めたせいでしょうか?



今月もまた、雪を踏みにいこうと、計画の最中です。

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  1. 2007/03/06(火) 20:32:00|
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【山の写真集3】 魅惑の尾根

宝剣岳~木曽駒~木曽前岳~麦草岳


木曽前岳から麦草岳へ。
個人的に魅力的な尾根だと思います。
初級のバリエーション程度のレベルでしょう。
ただ、ほとんど紹介されたのを見たことがありません。
ラッセルあり、アイゼン歩行あり、ロープワークあり・・・。
短いなりに、いろいろと楽しめます。


3度挑んで、2度クリア。
それでもまた・・・と思ってしまうようなルートです。
ま、どんなルートがいいかは、好き好きですので。。。。

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  1. 2007/03/03(土) 20:00:34|
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【道具を語る14】 スノーシュー

みなさんからいろいろとアドバイスを頂き、実戦にも投入したスノーシュー。
物欲に負けて買ったのは、散歩用ではなく登山用。
1回こっきりの経験でモノを言うのもなんですが、そのつもりで。
また、あくまで個人的感想ですので・・・通販の健康器具みたい。。。




やはりワカンよりもぐらない。
その分ラッセル能力は高いのでしょう。
ワカンのトレースの横を歩いてみたのですが、その差は歴然でした。

担いだときの重量は、ワカンの比ではないのですが、足につけてしまうと、それほど重さを感じませんでした。
休憩時、ザックの上に座ろうとすると、長めのテールが邪魔に。。。

3本のゴムバンドは、ワカンのバンドよりもしっかりフィットします。
脱着もワカンよりはるかにラクでした。


急登。
傾斜がきつくなってくると、ビンディングの中で靴が後にずれ、ヒールサポートを踏み倒してしまうことに・・・。
これは、バンドがゴムで伸縮する関係だと思われます。
かなりきつめにバンドを締めるか、踵部分のバンドを伸縮性のないものに交換・改造するか、と言ったところでしょうか。
(締め方がアマかったのかもしれません。。。)

トラバース。
慣れの問題かもしれませんが、ちょっと難渋しました。
特に下り気味の時には苦労しました。

下降。
やはり、前に向かって多少滑ります。
特に傾斜がきついと、バランスをとるのが難しい。。。
荷物が多ければ、余計、大変かと思われます。

トレース。
スノーシューのトレースはキャタピラのような。。。
ツボ足やワカンのトレースの上は、極めて歩きにくい。。。
人が多いところ(トレースのある可能性が高いところ)には不向きかもしれません。
スノーシュー自体が普及すれば、かなり解決するのでしょうが、これは未知数ですね。。。
逆であれば、あまり問題ないように思います。


登高の際、途中でアイゼンの世界になることがあります。
ワッパアイゼンなら、あんまり気にせずに進める場合があります。
スノーシューはアイゼンに切り替える場面の選択に、グレーゾーンがあまりないように思いました。
ここの判断を誤ると、えらいことになりそうだと思いました。
やはり、ワッパアイゼンが応用は一番利くようです。
スノーシューのツメがどの程度まで効くのか、その辺を考えておく(知っておく)必要がありそうです。

些細なことですが、Wストックでないと、スノーシューはなんとなくしっくり来ません。
ピッケルとだと、バランスがとりにくい。。。。
ワカンの時にはピッケルでもWストックでも、そんなに違和感がなかったのですが。。。


====結論====

ワカンは必要。
ただ、状況次第ではスノーシューのほうが強力。



スノーシュー、ツボにはまれば大きな効果を発揮しそうです。
ラッセル能力のみであれば、はるかにワカンの上です。
ただ、ワカンの適用範囲の広さも(ワッパアイゼンも含めて)捨てられません。

道具として使ってみて、なかなか面白いものでした。
ただ、万能だとは言えそうにありません。
ルートや季節などの条件に応じてワカンとどちらをチョイスするか、考える必要があるようです。

言わずもがなですが、私の場合、アイゼンはいずれにしても必携です。



1度しか使ったことがないので、経験が増え、慣れてくると考えが変わるかもしれませんね。。。。
せっかく買ったので、ちょくちょく使ってみるようにします。

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  1. 2007/03/03(土) 19:42:45|
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【山日記 26日目】 下山

さて、この日も朝はゆっくり。

下山日の行程は短めに。
2泊以上の場合、計画段階から毎回ここは変わらずにいます。
それまでに何かアクシデントがあり、もし遅れが発生しても、それを吸収できるゆとりのようなもの、と考えればいいか・・・。

好天は継続中。
予報では夕方まで晴れるとか。
昨日よりはガスが出るような感じ。

小屋を掃除して、戸をキチンと閉め、「ありがとうございました」。

一昨日来た道を戻るだけ。
この日も気温が高い。

例年のラッセル下山に比べると、快調。
渡渉点まで下ると、上部はガスの中。

最後はスキー場を横切り、駐車場へ。

営業していない上に暖冬。
草がたくさん見えている。

チケットカウンターの張り紙が寂しさを誘う。
木曽駒高原スキー場


さて、この日の課題は下山後の話。

数年前に開通した権兵衛トンネル。
木曽谷と伊那谷を結ぶ道で、開通時は地元ではかなり盛り上がったと聞きました。
西から車で行く場合、まずは中央道中津川ICから国道19号で木曽福島へ。
これは行きに走り所要時間は約1時間半。
で、帰りには伊那谷へ抜けて、中央道伊那ICから西へ。
この所要時間の差を測ることでした。
曜日・時間帯・道路事情など、誤差となりうるものは多々あるので、そのつもりで。。。

結果、権兵衛トンネル利用の場合の方が15分程度早かった。。。
走行距離が伸びた分のガソリン代、中津川~伊那間の高速料金を考えると。。。。
西から木曽福島へのアクセスには、たいした効果がなかった。。。。

ちなみに東からであれば、長野道の塩尻ICから国道19号を進むことになるので、伊那IC&権兵衛トンネルの方が、随分時間が稼げるように思います。
お金の問題は各自で判断してください。



ゆっくりたっぷりの2泊3日でした。
麦草岳、飽きずに行く山ですが、価値を認めてきてくれる人がいることはうれしい。
けれど、あまりに人が増えると、間違いなく足が遠のきます。
ひっそりと静かに。
それも魅力のうちなんですがね。。。

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  1. 2007/03/02(金) 16:36:39|
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【山日記 25日目】 頂上へ 終日好天

2日目。
朝はゆっくり朝寝坊。
前日が殆ど徹夜だったので、ぐっすりと眠れた。
予報、天気図とも好天。

小屋から出ると、快晴無風。
終日、この好天は続きそう。

この日の課題は、買ったばっかりのスノーシューの効能確認。
日々是好日124物欲の悩みでは、多くの方にアドバイスをいただきました。
本番での使い勝手等を、身をもって試す・・・というのが、目的です。

前日分かっていたことですが、頂上までバッチリのトレース。
課題のためには、トレースどおりに歩いたり、外したり。
その結果は後日まとめるとして・・・。


登りは暑いぐらい。
ラジオによると、3月下旬並みの気温だとか。
厳冬・2月の山というよりも、GWの山のような・・・。
木々の間から木曽駒が垣間見える。

森林限界を抜けると、宝剣、木曽前岳。
振り返ると御岳、乗鞍、北ア・・・。
この日は誰にも会わなかったので、景色も山も独り占め。

頂上手前の短い急斜面のところから、アイゼンに履き替え。
当然だが、スノーシューとは足の運びが違う。

やがて頂上へ。
麦草岳頂上

音も雲も全くなし。
冬にここまでの好天に恵まれたのも、随分久しぶりかも。

実は隣のピークの方が若干高い。
そこまで足を伸ばすと、2年続けて通った、木曽前岳からの稜線が見える。
何度見ても、好みの稜線。
トレースは全く見えず、通る人は少ないようだ。
来年、もう一回行くかぁ…。
とはいえ、仲間からは「え~~またかよぉ~~」と言われそうだが…。

お天気もいいので、ここでしばらくのんびり過ごす。
相変わらず風はなく、飛行機雲だけ。
これはこれで十分に幸せなのだ。

下りは同じ場所でアイゼンからスノーシューへ履き替え。
下りは下りで、いろいろと試しつつ。
何度か転んで雪まみれに。
やはり慣れも重要なもののひとつかな。。。

再び避難小屋に宿泊。
のんびりとした一日。
日没までに下山できることは可能だったが、静かに読書で過ごす。
小屋の窓から見る夕日がきれい。。。

贅沢に時間を使い、山に浸った1日。
パーティーで来たり、周りに人がいると、気を遣って、なんだかパタパタしてしまう。
が、誰もいないと、のんびりできていいもんだ。。。。

テーマ:登山 - ジャンル:スポーツ

  1. 2007/03/01(木) 19:10:21|
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