【概要】
7日午後4時40分ごろ、奥穂高岳(3、190メートル)南西の「ジャンダルム」付近で「悪天候で動けなくなった」と、40-50代の男女の登山グループから携帯電話で「吹雪で行動不能になった。寒いので早く助けにきて」と飛騨市消防本部に連絡が入った。女性の声で「けが人はおらず非常食もあるが、非常に寒く登山道が凍結している」と話したという。4人は千葉市緑区の男性教員(58)、東京都清瀬市の男性会社員(55)と妻(48)、東京都北区の女性病院職員(49)。4人が提出した登山計画では、7日午前6時に西穂山荘を出発し西穂高岳を通って穂高岳山荘に午後4時に到着して宿泊。8日に奥穂高岳から上高地に下りる予定だった。同日午後の穂高岳山荘付近は吹雪で、同6時半には5センチの積雪があった。8日午前5時50分ごろになって、男性会社員と県警高山署との携帯電話がつながり、「3人は無事だが、1人が2、3メートル滑落し、近くに行って声をかけても返事がない」などと話した。滑落したと見られるのは58歳の男性教員。8日には現場は積雪約20センチ、風速約20メートルの吹雪となっている。4人が救助を待っているのは、標高約3160メートル付近。テントの装備はなく、岩陰に身を寄せ合って救助隊の到着を待ち、非常食で飢えをしのいでいるという。
(毎日新聞、読売新聞、中日新聞、信濃毎日新聞、時事通信よりデータ引用・抜粋。転落者は実名表記、毎日新聞・中日新聞は全員の実名)
【考察】
「寒いので早く助けに来て」って・・・。
救助を求めた場合、一刻も早くと思う気持ちはわかります。
が、字にしてみると、なんだかなぁ・・・という気がするのは不思議なものです。
最初の段階での通報内容を要約すると、次のようになるかと思います。
「寒い。道が凍結して動けない。けが人はなく、食糧はある」
寒さや凍結は、事前に予想できる範囲内のことと思います。
防寒・凍結に対する装備計画に甘さがあったのでしょうか。
男性転落の経緯は今のところ情報がなく、なんとも言えません。
新しい情報があれば、追記の形で補足しようと思います。
一般論ですが、救助を待つならじっとしていて、ウロウロすべきではありません。
前項の遭難カルテ117にも書いたのですが、重複は承知の上で。
遭難カルテ113などで出た、ツエルト必携の話。
極めて基本的な点だと思うのですが・・・。
特に降雪も想定範囲内になる場合に、より重要さを増すと思います。
この4人に限った話ではありませんが、小屋泊まり登山者の意識、そこまで低いものになっているのでしょうか。
全ての小屋泊まり登山者がそうだと言うつもりはありませんが、かなりそういう人がいそうな気がします。
本件の一部報道には「軽装」をにおわすようなニュアンスのものもありました。
まあ、そんな風に言われても仕方がないのかもしれませんね。。。
今夜はビバーク第2夜になります。
状況は厳しいようですが、無事帰れることを願いつつ。
状況に進展があれば、追記しようと思います。
==========追記(2006.10.09)==========
9日朝、4人が救助されました。
3人は自力で歩ける状態ですが、滑落した58歳の男性教員はすでに死亡していたそうです。
また、亡くなった男性はこのパーティーのリーダーで、ビバーク中に熟睡して2メートルずり落ち、その後動かなくなったようです。
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テーマ:登山 - ジャンル:スポーツ
- 2006/10/09(月) 00:39:30|
- 遭難カルテ
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| コメント:3
日常、私たちは非常に安全に暮らしています。事故が起きそうな場面にはなんらかの予防がしてありますし、もし事故が起きても「助けて」の一言で誰かが助けてくれるでしょう。
しかし、いったん、登山や航海で山や海に漕ぎ出したとたん、そういった助けとは無縁の世界になります。手付かずの自然は、誰もやたらに来れない所にあります。そういったところで、自分が行動不能になれば、他人もまた行動不能なのです。
携帯電話が通じることが悪いのか、それとも安全に慣れきった日本人が馬鹿になってしまっているのか、その判断はつきませんが、なにかがおかしいように思います。
今回の連休は、直前の大荒れの低気圧から、海山の事故が多そうだと、空を見上げながら心配していましたが、案の定、悲惨な事故が多かったですね。いや、むしろ、昨今のブームから考えると少なかったというべきか。
- 2006/10/10(火) 12:49:29 |
- URL |
- おーの #rmbFb8ac
- [ 編集]
おーのさまへ。
携帯電話が通じるようになったことは、万一の際の通信手段の選択肢が増えた、と言う意味では歓迎すべきだと思います。
要は使い方の問題ではないでしょうか。
この問題も、何年も言われているのですが・・・。
「ヘリをタクシー代わりに使った」と、非難を浴びたケースが、過去にありました。
安易な救助要請が増えている事実がありますからね。。。。
通信手段と救助手段、進化には大きな差があると思います。
携帯が通じるからと言って、危険が減るわけではない、と言うことを忘れずにいたいものです。
- 2006/10/10(火) 18:59:39 |
- URL |
- 管理人 #MAyMKToE
- [ 編集]