平成20年夏期における水難・山岳遭難発生状況についてが9日、警察庁から発表されました。
それによると、発生453件(前年比43件増)、遭難者525人(79人増)、死者・行方不明者79人(31人増)。
この3つのデータは、いずれも過去最悪の数字になりました。
資料にざっと目を通し、
昨年7~8月の統計などと比較しながら感じたことを書きます。
主要山岳(系)別の発生状況の比較から。
事故発生件数、大きく増えたのは秩父山系(4→18)、富士山(19→38)。
関東周辺の山での事故増加が著しかったようです。
落雷事故があった白馬を含む北アはかえって減少(152→139)しています。
ところが、北アの死者は増加(11→26)。
遭難者中に占める死者の割合は大幅にアップ(6.92%→16.25%)。
全国平均も増加(10.76%→15.05%)していますが、増加幅がより著しい結果になりました。
遭難者中に占める死者割合の全国平均は15.05%ですが、昭和43年から平成20年の平均を出してみると15.06%と、ほぼ同じ値になりました。
41年分の平均と今年の値が同じということは、こと死亡率に関してはあまり前進が見られていないということか。。。。。
年齢別遭難者数。
50代前半~70代前半が多いのは去年も同じ上に、年間の統計でもここ何年か同じ傾向。
特に50代後半~60代後半の多さは毎度ながら顕著な傾向があります。
ただ資料冒頭の解説が、昨年は50代後半~60代後半をピックアップしていたのに、今年はただ「中高年」とひとくくりに。
このあたりは若干、表現が後退した感があります。
毎回同じことを書くようでなんですが。。。。
のべ入山者数などの母数がほしいところですね。。。。
7、8月の遭難統計の位置づけを考えてみます。
昨年7、8月の統計と、
昨年1年間の統計を比較してみると大まかなことが分かるのではないかと思いました。
前提となるのは16.67%(2ヶ月÷12ヶ月)とします。
発生件数の27.63%、遭難者数の24.67%を占めています。
これは入山者が多いことと密接に関わるモノだと思います。
様態別の構成比(人数)を比較してみます。
【様態 7,8月の割合(年間割合)7、8月を除いた割合】の順で主なモノを並べると以下のようになります。
転落・滑落 28.0%(22.9%)21.2%
道迷い 15.2%(34.7%)41.1%
疲労・病気 24.2%(13.3%)10.1%
転倒 21.5%(14.2%)11.8%
道迷いは少なく、疲労・病気と転倒が7、8月に高い傾向があります。
道迷いについては、人通りも多くルートも明瞭な、メジャーなコースへ入る人が多いためでしょうか。
疲労・病気、転倒については、他の季節に山に行かない人も夏には・・・というケースが多いためかもしれません。
遭難者中に占める死亡率も比較してみました。
9.9%(12.9%)13.9%
冬のように厳しい気象条件でないため、夏の死亡率は低めになっていると思われます。
年齢構成比の比較。
~14 4.5%(3.7%)3.4%
15~19 2.5%(1.4%)1.1%
20~24 4.5%(3.0%)2.6%
25~29 2.2%(2.7%)2.9%
30~34 7.0%(4.8%)4.1%
35~39 6.1%(4.8%)4.3%
40~44 2.0%(3.9%)4.5%
45~49 5.6%(5.4%)5.3%
50~54 7.6%(7.6%)7.6%
55~59 16.8%(14.5%)13.8%
60~64 12.6%(13.9%)14.3%
65~69 13.7%(14.8%)15.1%
70~74 8.3%(9.5%)9.9%
75~79 4.3%(6.6%)7.3%
80~ 2.5%(3.3%)3.5%
ばらつきは、ほぼ3%以内に収まっていますので、7、8月に見られる顕著な差はないというところでしょうか。
単独登山の割合や通信手段、目的別など、夏期と通年の資料で統計項目が違います。
そのあたりのデータがあれば、もう少し具体的に見えてくるのではないかと思います。
今回は、昨年分のデータのみです。
ですので、昨年特有という部分があるかもしれません。
41年分のデータがあれば、全体の傾向の推移のようなモノも見えてくると思います。
さらに詳細なデータがあれば、対策を練る上で、大きな意味を持ってくると思います
(文中に計算間違い等、あるかも知れません。。。。)
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テーマ:登山 - ジャンル:スポーツ
- 2008/09/25(木) 23:43:31|
- 日々是好日
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山道を行くさんの日々是好日で、警察庁発表の今期の水難・山岳遭難発生状況についてを良く分析されているので関心のある方に読んでいただきたく紹介させていただく
- 2008/09/27(土) 21:57:24 |
- 新立教大学院・21世紀:危機管理研究会のプログ