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山道を行く

カラダとアタマと心。 すべて働かせるのが山の魅力でしょうかね。

【遭難カルテ172】 北アで61歳女性、2週間ぶり救出


【概要】
北アルプスに入山し、下山予定日の今月16日を過ぎても戻らずに行方が分からなくなっていた東京都江東区の会社員女性(61)が30日、大町市の三俣蓮華岳近くの湯俣川で16日ぶりに救助された。30日午前9時半ごろ、三俣蓮華岳方面から湯俣川を下ってきた8人パーティーが「助けてください」との声を聞き、沢筋から一段高い場所の岩陰にいた女性を見つけた。パーティーのメンバーがカステラなどを食べさせ、山岳ガイド(53)が4~5キロ下流の山小屋「晴嵐荘」に連絡して救助を要請。長野県警のヘリコプターに救助され、同県松本市内の病院に収容された。衰弱しているが、外傷はなく、意識もはっきりしているという。女性が見つかったのは双六小屋から約7キロ離れた標高1700メートル付近にある湯俣川と赤沢の合流部付近。女性は13日に岐阜県高山市の新穂高温泉から単独で入山。山小屋に泊まりながら3泊4日で北アルプスを縦走し、16日に富山市折立に下山する予定だった。13日は笠ケ岳近くの笠ケ岳山荘に泊まり、14日に双六岳近くの双六小屋で昼食を取った後、三俣蓮華岳方面に向かう途中で道に迷い、斜面を滑り落ちた。現場は急で登れなかったため、沢を下った。発見直前の3日間は同じ場所でビバーク。食料は少ししかなく、川の水を飲んでしのいだという。女性は一人暮らしで、連絡がとれないことから心配した娘が自宅を訪れて登山計画のメモを見つけ、22日、岐阜県警高山署に捜索願を出していた。救助前の3日間は発見場所近くの岩のすき間で野営した。非常用の食糧やテントは持っていなかったという。女性の登山歴は10年以上という。女性が発見された場所は廃止された登山道近くで、登山者が通ることはほとんどない。
(朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、中日新聞、信濃毎日新聞よりデータ引用・抜粋)



【考察】
まずは無事救出、何よりでした。
2週間ぶりの救出など、共通点の多い前項とあわせて読んでいただけると幸いです。

天候が15日以降落ち着いていた点が大きなポイントだったと思います。
一度でも大きく崩れていれば、違った展開になったと思います。

計画からすると、なかなかの健脚コースでしょうか。
おそらく軽量化された装備での入山だったと思います。

前項で述べた日帰り装備についてに関連して。

テントなどがない状態でのビバークですので、やはり好天の意味は大きかったと思います。
これはラッキーな点でした。
今回のようなケースを考えると、ツエルトは携行すべきだったのではないでしょうか。
また、小屋泊まり予定だと、食料が貧弱になります。
この女性がどれほどの食料を持っていたのかは不明ですが、やはりある程度は持っておくべきでしょう。

さて、事故の原因は道迷い→滑落という点に行き着きます。
13日と14日は、前線の影響などで天候がいまひとつだったようです。
ガスに巻かれて道に迷い、その挙句に滑落し、道に戻れなくなり・・・。
そういった展開だったのでしょうか。。。。。

で、あのルートって、迷うようなところがあったろうか?
だいぶ記憶がぼやんとしているので、はっきりとは言いにくいのですが。。。。

いずれにしても、人通りの少ない場所でビバークしていたわけで、たまたま近くを通ったパーティーがいたこともラッキーでした。

いくつかの幸運が重なった結果、無事救出に至った、ということだと思います。



16日に下山予定、家族からの通報が22日。
すでに6日のロスが発生しています。
娘さんが自宅に行きメモを発見したため、通報・捜索となったようです。
前項と同じ内容になりますが、やはり計画書を家族に渡しておくことの重要さがここでも・・・・。


もう一点、前項との共通点。
沢筋という、水の確保が容易な場所でビバークしていたことも大きなポイントだと思います。
水さえあれば1ヶ月近く生きられると教わった記憶があります。
もちろん、気温が低かったり天気が悪ければその期間は短くなっていくのでしょうけれど。
救助を待つ場合には、水の確保が重要なポイントになってくるのでしょう。
動き回らずに体力を温存したり、食料を食い延ばしたりも同時にやるべきことです。
また、沢を下り続けるのは危険なので、水の確保ができる場所でじっとしていることが重要なのかもしれません。
また、この女性は沢筋から一段高い場所でビバークしていたようです。
増水や鉄砲水への警戒も同時に必要になってくる、ということです。




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テーマ:登山 - ジャンル:スポーツ

  1. 2010/09/01(水) 02:41:30|
  2. 遭難カルテ
  3. | トラックバック:1
  4. | コメント:7
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コメント

おはようございます。今朝の朝日新聞に詳しい記事がありました。
http://www.asahi.com/national/update/0831/TKY201008310506.html
> 双六小屋から三俣蓮華岳に至る登山道は稜線(りょうせん)伝いのルートと、東面の山腹の
>まき道がある。女性はまき道を行って湯俣川源流の樅(もみ)沢に迷い込んだ、と木村さんは推測する。

>14日、双六小屋でラーメンを食べた後、出発。雨で登山道が水浸しになり迷った。
>18日、手持ちの水がなくなり、沢に下りて岩陰でビバーク。26日か27日に食料が尽きた。

双六小屋から三俣蓮華への巻き道は私も歩いたことがあります。
天気がよければ行先に鷲羽岳がそびえていて迷いようが無いのですが、
山腹の斜面に付けられた細い道なので、雨になるとちょっと嫌なところです。
早い段階で登り返せばよかったのにと思いますが、迷い込んだ先で伊藤新道の踏跡を
たどってしまって判断がにぶったのかもしれません。

記事の最後に食料について記載があります。小屋泊にしてはたくさんですね。
>【女性が携行した食料】バナナ2本▽キュウリ1本▽アルファ化米1袋▽袋菓子2
>▽あめ20個▽パン2個▽イカの薫製1袋▽ミニドーナツ1袋▽みかん1個▽オレンジ1個
>▽ゼリー5個▽インスタントみそ汁3▽お茶漬けの素▽栄養補助食品
  1. 2010/09/01(水) 07:06:04 |
  2. URL |
  3. ぴら #-
  4. [ 編集]

ぴらさまへ。
こんにちわ。

情報、ありがとうございます。

女性の持っていた食糧、通常で1日分ぐらいといったところでしょうか。
食糧に関してはそれなりの備えがあったということだと思います。

朝日新聞の記事にもありましたが、やはり天候が安定していたことは大きかったようですね。
ですが、これもたまたまのことだと思います。
やはりツエルトは携行すべきでしたね。

天候の加減で視界が悪いのであれば、巻き道ではなく尾根通しで進むべきだったかもしれません。
当時の天候状況にもよるのですが、そのあたりははっきりしていませんね。

記事を読み返してみて、やはり幸運が重なった結果なんだなぁ・・・と、改めて思いました。
ま、幸運なんて当てにできないからこそ、自分たちにも学ぶべきことが見えてくると思います。

  1. 2010/09/01(水) 14:13:01 |
  2. URL |
  3. 管理人 #MAyMKToE
  4. [ 編集]

助かって良かったと思うのですが、少し気になることもあります。

1つは行方不明情報自体があまり報道されていないということと、捜索はどのように実施されたのか?それともされなかったのか?ということです。
山小屋と山小屋の間で行方不明ですから探す範囲もある程度絞れます。それとも捜索願いが出た時点で通常の捜索日数の3日を過ぎていたので形だけの捜索だったのか?秩父の救助隊が行き先も100名山というだけでがんばって見つけたのに比べると影が薄いですね。

もう1つは遭難された方が地図を持っていたのだろうかという点です。水を求めて下ったのはわかりますが、水はそんなに大きく下らなくてもとれますし、全体の地形はそんなにけわしくないと思います。滑落しても大怪我はしていないようなので大した距離では無いと思います。稜線には間違いなく道があるのに、どうしてどんどん下ったのでしょうか?昔の地図で廃道が載っていたのかも知れません。わかりませんが。登り返していれば自力下山も可能だったと思います。

もっともこの沢は大きな滝も無く、釣をしながら歩いて行けるような沢ですので連絡された方が見つけてからその日のうちに晴嵐荘へ下っています。登るか、下るか、留まるか逡巡しながらの行動だったのでしょう。こういう事態に陥った時にいかに正常な思考をするのが難しいかということかも知れません。
  1. 2010/09/01(水) 22:20:37 |
  2. URL |
  3. よかっぺ #1JQD0tfs
  4. [ 編集]

こんばんは、お久しぶりです。

(私のコメントは、ジグソーパズルの穴埋め程度にお読み下さい)

この女性、たまたま私の友人が所属する山岳同好会の方で、友人が遭難を知らされたのが8/23。
で、勤務の都合もあり、8/28~9/1の予定で単独で双六のテン場に幕営しながら捜索に入りました。
小生も可能なら協力しようかと、一瞬考えたのですが会社を休めず。。。

管理人さんご指摘の通り、家族に計画の詳細は知らせてなかったようですが、会には連絡してあったようです。但し、それなりの様式で、かつ警察や入山時などにも提出していたかは不明。
8/22の捜索願い提出を受け、岐阜県警が二度?富山県警が一度双六~三俣蓮華~黒部五郎の登山道付近を中心に上空ヘリを飛ばしたようです。
ただ、発生から既に10日近く経過してしまい、それ以上の体制では取り組めないと判断したようです。
結果的に、本人は樅沢?から湯俣川へと1000m近くも下ってましたから、ヘリでは見つけられなかったですね。
岐阜県警のサイトには「行方不明者について情報提供のお願い」として、写真入りで実名掲載されていました。

なお、8/14は三俣山荘付近の登山道は沢のように雨水が流れていたそうです。
あの巻道、晴れて見通しが良ければどうって事ないですが、初めてのルートで風雨と濃霧、特にゴーロ帯などは雨に濡れると踏み跡が不明瞭になりますし、今年は沢筋に残雪も多かったですので。。。

以上、長野県警の山岳救助隊の知人より入手した概略情報を加えて、穴埋めになるか心許ありませんが、コメントしました。

最後に一言、言論の自由とは申せ評論家やマスコミではないのですから、遭難者の人格を傷つけるようなコメントは見たくない思いです。勿論、このサイトにコメントされる方々は思慮分別のある方ばかりで安心ですが。。

※蛇足ですが、小生がこのサイトを知ったのは「遭難カルテ113」の主人公も知人でして(余り自慢できませんがネ)、発見・救助された日に捜索隊に加わっていたからです。
  1. 2010/09/02(木) 02:01:21 |
  2. URL |
  3. こば #AN32Su.E
  4. [ 編集]

よかっぺさま&こばさまへ。
まとめレスとなりますが、ご容赦ください。

>行方不明情報自体があまり報道されていないということと、捜索はどのように実施されたのか?それともされなかったのか?ということです。

不明報道については同感です。
捜索については、こばさまのコメントが答えになっている部分もあると思います。

>岐阜県警のサイトには「行方不明者について情報提供のお願い」として、写真入りで実名掲載されていました。

さて、前項の秩父の件では実名報道、今回の件では名前は伏せられた報道。
おそらく発表した警察の資料の違いに基づくものだと思いますが、ちぐはぐな印象を受けました。
岐阜県警のサイトで実名が出ていたけれど、発表した長野県警は伏せた、ということでしょうか。
プロであるガイドや著名人はともかく、一般の登山者の遭難については(実名であるにせよないにせよ)一定の基準があってもいいのかも・・・と思いました。

>もう1つは遭難された方が地図を持っていたのだろうかという点です。

食料については、ぴらさまに教えていただいた報道で出ていましたが、装備に関する報道は薄かったと思います。
地図については見た記憶がありません。
持っていたとしたら、その次にはきちんと地図が読めたか?ということにもつながっていくと思います。

>登るか、下るか、留まるか逡巡しながらの行動だったのでしょう。
>こういう事態に陥った時にいかに正常な思考をするのが難しいかということかも知れません。

同感です。
食料が尽きてくると、アタマがぼーっとしてきて、判断が鈍るようなこともあるでしょうね。

>結果的に、本人は樅沢?から湯俣川へと1000m近くも下ってましたから、ヘリでは見つけられなかったですね。

捜索・救助を待つ場合、動き回らずに体力を温存することと合わせて、発見されやすい場所でじっとしていることも考えておいたほうがよさそうですね。
よかっぺさまのコメントにもあるのですが、なぜそんなところまで下りてしまったのか、ちょっと不思議ですね。
滑落して登り返せなかった、との報道はあったのですが。。。。。。。

>言論の自由とは申せ評論家やマスコミではないのですから、遭難者の人格を傷つけるようなコメントは見たくない思いです。

毎回、そうならないように心がけてはいるのですが。。。。。。
もし不都合な表現があった場合は、遠慮なく指摘してください。

  1. 2010/09/02(木) 18:07:35 |
  2. URL |
  3. 管理人 #MAyMKToE
  4. [ 編集]

確かにジグソーパズルのように状況が少しずつ見えて来ました。

長期生存救出の方はほとんど沢沿いで発見されています。水がなければ生きられないので当然といえば当然ですが。
お盆とその後の時期ですから登山道自体はかなりの登山者が通ったと思われますので、登山道や稜線上にいることはまず考えられないので一通り登山道沿いからの滑落をチェックしたら、このコースの場合は一度この沢筋を飛んでいれば、天気も良く谷も浅いので見つけられたかも知れません。

先日もテレビで道に迷ったら高い方へ行けと確定的に報じられていたので本当にそれで良いのか?という疑問はさておき、どうしても遭難者は沢に下る習性があります。その割には捜索の時に沢沿いの捜索が軽んじられているように思います。比良の時も公的救助が打ち切られ、岳連の捜索隊が谷にはいって即日発見しています。霧島の時も公的救助が打ち切られ、岳連の捜索隊が谷にはいって発見しています。こちらは死亡していましたが。

救助技術の研修会は頻繁にありますが、捜索技術の研修会はほとんどありません。平地なら碁盤の目をしらみつぶしもありえますが、山岳地ではそれはありえません。やはり生存者救出のためには登山道>沢沿いとなると思います。岐阜と富山のヘリがそれぞれの所管の登山道沿いに飛び、見つかったのは長野の沢沿いという所も少し気になります。相次ぐ救助ヘリの事故を受けて逆にヘリによる山岳救助が見直され縮小されるのではとの心配もあります。

それから最近気になっているのは廃道です。霧島の子どもの道迷いも新しい道が整備され、残っていた旧い道に迷い込み滑落しています。道は廃道になっても消えるところはあっという間に消えますが、残る所はいつまでも道型が残ります。入口に廃道と表示されていれば良い方で、単にロープが張ってあったり、木が横たえてあるだけだったりします。途中にこの道は廃道ですなどという標識はまずありません。そして道が崩れたり、丸太が腐ったりしてけっこう危険なところがでてきます。さらに地図上の道は改定された新しい地図に買い換えるまでそのまま残ります。

公的救助のあとは家族の方に依頼されたり、山仲間が自主的にというような形でガイドや登山者団体が捜索を行います。中央団体以外は法人格が無いので公的救助の段階ではガイドや登山者団体は警察や消防から相手にされません。古くから個人として地元の遭難対策協議会に係わっているような方は別ですが、公的救助の段階では知り合いの公的救助隊員から情報を取りつつ邪魔しないよう、二重遭難しないようにして活動するしかありません。地域によって異なるかも知れませんが、公的救助に供される炊き出しも提供されず自前で自主捜索しているところもあります。しかし、そういう自主捜索がかなり発見しています。新聞には登山者が見つけたと報じられますが、実際には捜索していた自主捜索の方が発見している場合も多いです。このあたり、もう少し連携できれば良いのにと思うのですが・・・・

  1. 2010/09/04(土) 21:02:13 |
  2. URL |
  3. よかっぺ #1JQD0tfs
  4. [ 編集]

よかっぺさまへ。
レス遅れ、申し訳ありません。

>救助技術の研修会は頻繁にありますが、捜索技術の研修会はほとんどありません。

そういえば救助技術や救護法の講習は受けたことがあるのですが、捜索技術についてはありませんでした。
自分の視点にも欠けていたと思います。
なるほど・・・・目からウロコでした。

登山者の側からすると、救助を求める場合、いかには発見してもらいやすくするか、というのもポイントになってくるんじゃないかと思います。
ご指摘のような現況だとすれば、どんどん沢に入っていってしまうと、捜索が遅れてしまう可能性が大きくなる、ということでしょうか。
捜索技術が向上すれば話は変わりますが、現状ではそこも考える必要がありそうですね。

公的救助と自主捜索。
この連携はなかなか難しいでしょうね。
自主捜索に携わる人たちには、頭が下がる思いです。
なんとか良いカタチでの連携がすすめばいいと思います。
  1. 2010/09/07(火) 08:38:49 |
  2. URL |
  3. 管理人 #MAyMKToE
  4. [ 編集]

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